つらつらと好きなBLコミックについて語るブログです。
内容によってはネタバレを含みますのでご注意ください。

南月ゆう先生の最新刊「雛鳥は汐風にまどろむ」です。





表紙だけ見てイメージすると、歳の離れた兄弟とお兄ちゃんの彼のように見えるのですが、内容はそこそこヘビーです。
現在進行形の話はそれほどではないのですが、それぞれの抱える過去が・・・ね。

登場人物は、事故で両親と姉を亡くした勇一(真ん中の人物)と姉の息子で甥の歩。引っ越し先で出会った陵の3人です。

<あらすじ>
事故で両親と姉を亡くしたため、甥の歩を引き取って育てることになった勇一は、海辺のある町へ引っ越し新たな生活をスタート。近所の惣菜屋に立ち寄った二人は、そこで陵に出会う。人当たりのいい陵とすっかり常連になった勇一と歩。ある日、勇一は歩を育てていくことへの責任感から歩を叱り、歩が家を飛び出してしまう。落ち込む勇一に「ちゃんと向き合え」と背中を押してくれる陵だが、目の前で勇一と歩の絆が深まるところを見て、陵の中にある感情が湧き上がってきて・・・


シリアス度 ★★★☆
H度 ★★☆☆

一番の見どころは歩くんでしょうか。
南月先生の描く子供は、ほんとうにかわいい。
私は特に目の描写が好きです。
子供時代の陵もかわいいけど切なすぎる。


---ここからネタバレが含まれます---



冒頭、陵が海辺を歩きながらあるものを「みつけた」と、日にかざします。
これが始まりで、すべてがこれに帰結していくストーリーです。

これはシーグラスというもので、本編中では、
もとは割れたガラスだけど何年も海の波にもまれて少しずつ角が削れて丸くなるんです。
どこから来てどれくらいの年月を経てここに流れ着いたのか・・・
そんな風に想いを馳せる愛好家も結構いてね、海の宝石なんていう人もいる

と陵が説明して、そこで見つけた上質のシーグラスを勇一にプレゼントします。

歩は勇一に内緒で一人海辺でシーグラスを拾い続ける。
そこで陵と二人で過ごす時間が増え、陵は自分の境遇と歩を重ね合わせる。

陵にとってはシーグラスは母親との宝探しのきれいな思い出。
母親の病気による別れや親族から虐げられて育てられたこと、それから誰にも愛されず誰も愛さず殺伐と生きてきたのが、勇一と歩に出会ったことで揺らぎ始める。

陵と歩の違いは、陵には愛情を注いでくれる家族がいなかったけど歩には勇一がいること。
歩が内緒でシーグラスを集めていたのは勇一のため。

勇一は歩を育てていくことに責任感やら不安やらいろいろ抱えて、お互いに相手に嫌われたくないと腫れ物に触るみたいに接していた。
でも陵のおかげでお互いの大切さや相手の気持ちに気付くことができた。

純粋な愛情でお互いを思いあう二人を見て、陵は「自分も勇一に育てられていたなら」「勇一が欲しい」と思い始めていく。

過去の陵は、人の幸せを欲し、奪っては興味をなくしを繰り返してきた。
でも勇一が欲しいと思っても歩が悲しむのは見たくないと思いとどまったのは、陵も勇一と歩のおかげで変わることができたんですね。

愛情は分け与えて減っていくのではなく、愛することで何倍にも増えるもの。
勇一は歩も陵もふたりとも愛してくれるよ、ということに陵が気付くことが出来て救われたのでしょう。

描き下ろし番外編「after story」
歩が友達の家にお泊りの日の勇一と陵の様子。普段は人当たりのいい大人な陵がふたりになると子供っぽくなったり嫉妬深くなったり・・・

電子書籍には電子限定描き下ろしSSが付いてます。
3年後のお話です。陵の仕込みを手伝う歩が成長してます。勇一が歩の作る玉子焼きを世界で1,2位を争う美味さだなと言ってくれると歩が自慢するのに対抗する陵みたいな?

カバー下はあとがき+イラストと、1Pまんがのタイトルが「雛鳥のララバイ」3人で川の字で寝るとこうなるという話。